サイズ表記のシールを剥がす指

カジュアルウェアなどの場合、
ときどきサイズ表記のシールなんかがその表面に直接貼って
販売されていることがあるじゃないですか。
で、そのシールが目立たないものだったりすると、
それを剥がし忘れて、そのまま着ちゃうことって、
誰でも一度くらいはあると思うんですけどね。
実は私もこの間、それをやっちゃったんですよ。
その日は休日だったため、私もラフな格好で出かけたんです。
古くからの友人とランチをする約束していたので。
それで電車に乗り込んでみると、
どうやらどこかで人身事故があったらしく、
休日にしては珍しく車内は満員状態でした。
もちろん私も座ったりできるわけもなく、
人混みに揉まれながら、どうにかつり革を握ってっていたんです。
何駅か過ぎていき、次第に車内の混雑も解消されていき、
ほっとしてひと息ついていた頃、
突然カバンを持っていた左の腕に違和感を感じました。
さりげなく視線だけをそこに向けると、
そこには私のものではない、誰かの指が触れていました。
私は痴漢だと思い、咄嗟に身を引こうとしたその瞬間、
ピリリリ……と、シールが剥がれる音が小さく聞こえたのです。
そうです。
その指は、私の買ったばかりのパーカーに付いていた、
サイズ表記のシールを剥がそうとしてくれていたのです。
顔を上げると、そこには人の良さそうなおじさんが立っていました。
彼は私と目が合うと慌てて言い訳を始めました。
痴漢ではない。シールを剥がしてあげようと思っただけ。
こんなシールが付いていると教えてあげたところで、
恥ずかしい思いをさせちゃうと思ったから、
気付かないようにそっと剥がしてあげようかと思って。
彼はしどろもどろにそんなことを言っていました。
結局私は恥ずかしい思いをしてしまいましたが、
しかし彼の人柄の良さに、なんだか救われた気分になったのも、
また事実です。